今の時代、企業経営に際して、労働法への対策は必須といえます。
ところが、労働法への法律遵守が甘く、想定外の法的リスクを負う企業様もいらっしゃいます。
そこで、このページでは、企業が知っておくべき労働法の基礎知識について、企業法務に注力する弁護士が解説いたします。
このページの目次
労働法とは
実は、日本には「労働法」という名前の法律はなく、労働法は、労働に関する法律の総称のことを指しています。
労働基準法・労働組合法・労働関係調整法は、労働三法と呼ばれていますが、そのほかにも、労働契約法、労働安全衛生法、労働者派遣法など、労働に関するさまざまな法律があります。
このうち、企業法務の中で特に重要なのは、労働基準法と労働契約法になります。
以下では、労働法のうち、これら2つの法律について、見ていきます。
労働基準法
労働基準法は、労働条件の最低基準を定めるものです。
労働基準法には、規定を破った時の罰則なども定められており、企業の法律遵守が求められています。
(1)労働条件
企業は、従業員の雇用時に、賃金や労働時間などの労働条件を明示する必要があります(労働基準法15条1項)。
労働条件のうち、労働契約の期間、就業場所、従事すべき業務、労働時間、賃金、退職に関する項目などについては、書面の交付が求められています(労働基準法施行規則5条)。
(2)就業規則
常時10人以上の従業員がいる企業は、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務づけられます(労働基準法89条)。
就業規則とは、労働条件や職場規律などの職場のルールを定めたものです。
この就業規則がないと、懲戒解雇などの懲戒処分ができなくなってしまうため、企業にとってはその作成が必須といえます。
また、就業規則の雛形をそのまま使用したせいで、裁判などで、かえって会社に不利になる例もあるため、就業規則を作成する際には、弁護士にご相談頂くのがよいと考えています。
(3)労働時間
労働基準法では、原則として1日の労働時間は8時間、1週間の労働時間は40時間までとされています(労働基準法32条)。
これを超えて労働させる場合には、労働者代表者との間で、「36協定(サブロク協定)」を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
また、残業をさせる場合には割増賃金が発生しますので、注意が必要です。
(4)休憩時間
労働時間が6時間を超える場合には少なくとも45分、8時間を超える場合には1時間の休憩を与える必要があります(労働基準法34条1項)。
また、週に1日の休日を与えることも義務付けられています(労働基準法35条1項)。
なお、裁判例上、休憩中であっても電話番を指示するなど、労働からの解放が保障されていない場合には、労働時間とみなされ、賃金の支払が求められるため、注意が必要です。
労働契約法
労働契約法とは、企業と労働者の間で締結する労働契約について、基本的なルールを定めた法律です。
(1)懲戒
懲戒処分は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、権利濫用として、無効になります(労働契約法15条)。
懲戒処分には、戒告・けん責、減給、出勤停止、降格などがあります。
(2)解雇
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、権利濫用として無効になります(労働契約法16条)。
日本の裁判において、解雇のハードルはかなり高く、企業による解雇が無効とされる事例が多く存在します。
しかも、解雇が無効とされた場合には、解雇日まで遡って、その従業員の賃金を払わなければなりません(パックペイと呼ばれます)。
裁判所に、その従業員を解雇する理由があると判断されても、解雇に至る手続きが相当性を欠いているとして、解雇を無効にされている例も多いです。
そのため、従業員の解雇を検討されている企業の方は、必ず弁護士に相談された方がよいです。
最後に
今回は、企業が知っておくべき労働法の基礎知識について、企業法務に注力する弁護士が解説しました。
想定外の法的リスクを回避するためにも、弁護士からのアドバイスを受けることは重要であると考えております。
京都の益川総合法律事務所では、1983年の創業以来、中小企業の顧問弁護士として、多くの労働問題を解決して参りました。
従業員との関係に、お困りの企業経営者やご担当者の方は、お気軽にご相談ください。