解雇トラブルを避けるための法的アプローチ

企業の顧問弁護士をしていると、従業員を解雇したいとのご相談を頂くこともあります。

しかし、従業員を解雇する場合、事前にしっかり対策をしておかないと、後から不当解雇であると訴えられ、トラブルになる可能性が高いです。

そこで、今回は、解雇トラブルを避けるための法的アプローチについて、企業側で紛争案件に注力する弁護士が解説いたします。

解雇の種類

解雇には、主に以下の3種類があります。

(1)普通解雇

普通解雇とは、従業員の債務不履行などを理由として、企業側が一方的な意思表示によって、労働契約を解約することを言います。

従業員の勤務成績が悪かったり、私傷病により業務ができなくなったりした場合などに、普通解雇を選択することになります。

(2)懲戒解雇

懲戒解雇とは、従業員が会社の秩序を著しく乱したことに対して、制裁として行う解雇を言います。

解雇の中で、最も重いのが、この懲戒解雇です。

多くの場合、退職金も支払われません。

従業員が会社内で横領をしたり、窃盗をしたりしたなど、極めて悪質性の高い行為をした場合に、懲戒解雇を選択することになります。

(3)整理解雇

整理解雇とは、企業が経営上の必要性から人員削減のために行う解雇を言います。

一般的に「リストラ」と言われるのが、この整理解雇です。

整理解雇も普通解雇の一種ですが、普通解雇と異なり、従業員側の落ち度がありません。

そのため、整理解雇を行うためには、普通解雇に比べて、厳しい条件を満たす必要があり、具体的には、以下の4つの条件を満たすことが必要になっています。

  1. 人員削減の必要性
  2. 解雇回避努力の実施
  3. 解雇対象者の人選の合理性
  4. 手続きの妥当性

正当解雇にするための法的アプローチ

従業員側から、不当解雇と訴えられないためにも、下記の法的アプローチを取ることが重要です。

(1)労働基準法などで禁止されている解雇でないことの確認

そもそも、労働基準法などの法令においては、一定の場合の解雇を禁止しています。

例えば、労働基準法においては、従業員が業務上負傷したり、病気になったりした場合に、その療養のための休業期間及びその後30日間は、解雇してはならないと規定されています(同法第19条1項)。

また、労働基準法においては、従業員が労働基準監督署に法律違反の事実を申告したことを理由とする解雇も禁止しています(同法104条2項)。

さらに、男女雇用機会均等法においては、女性の婚姻・妊娠・出産等を理由に解雇してはならないと規定されています(同法第9条)。

このように、労働基準法などの法令においては、一定の状況下において、企業が解雇をすること自体を否定しているため、これらに該当しないことを確認することが重要です。

(2)就業規則に解雇事由が記載されていること

少なくとも、懲戒解雇を行う場合には、就業規則に解雇事由が規定されていることが必要です。

そして、当該従業員の行為が、就業規則上の、どの解雇事由に該当するのかを適用していくことになります。

(3)解雇を行う合理的理由があること

従業員の行為が、就業規則上の解雇事由に該当したとしても、解雇が認められない場合があります。

なぜなら、解雇を行うためには、客観的に合理的理由があることが必要になるからです。

労働契約法においても、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定されています(同法第16条)。

一般的に、解雇事由としては、従業員の労働能力の欠如(能力不足・成績不良・適格性欠如など)や、勤務態度不良(度重なる無断欠勤や遅刻・早退過多など)、非違行為の存在(セクハラやパワハラ・業務命令違反・暴行脅迫・不正行為など)などが挙げられますが、具体的に、当該従業員の行為が、従業員の地位を剥奪するに値するほどの行為といえるか否かを検討することになります。

(4)解雇を行う社会的相当性が認められること

従業員の行為が、就業規則上の解雇事由に該当して、解雇を行う客観的に合理的理由がある場合でも、解雇を行う社会的相当性が認められなければ、不当解雇となってしまいます。

言い換えれば、正当解雇にするためには、当該従業員を解雇する以外に他の手段がなかったと言える必要がありますし、弁明の機会などの解雇手続きを適正に行うことも重要になってきます。

解雇を行う前に弁護士に相談を

解雇を行う前に、弁護士に相談することが大切です。

なぜなら、当該従業員を解雇できるかについては、裁判例の傾向から判断する必要がありますし、当該従業員を解雇する場合にも、弁明の機会などの解雇手続きを適正に行う必要があるためです。

失礼ながら、会社が自社の判断のみで解雇を行ったために、裁判に堪えうる証拠がなく、しかも解雇手続きを適正に行っていないために、不当解雇と判断されるケースも多く見られます。

仮に、裁判所から不当解雇と判断された場合には、企業は従業員に対して、解雇日までの賃金を遡って支払う必要が生じ、企業にとって、とても大きな負担になります。

例えば、解雇から2年後に、裁判所によって不当解雇と判断された場合には、当該従業員に対して、2年分の賃金を遡って支払わなければならないのです。

裁判所から、正当解雇と認めてもらうためにも、解雇を行う前に弁護士に相談することが重要になってきます。

最後に

今回は、解雇トラブルを避けるための法的アプローチについて、企業側で労働問題や紛争案件に注力する弁護士が解説しました。

京都の益川総合法律事務所では、1983年の創業以来、中小企業の顧問弁護士として、解雇案件を含む多くの労働紛争を解決して参りました。

解雇トラブルを避けるための法的アプローチを具体的に知りたい企業の方は、お気軽にご相談ください。

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