コラム

美容室・理容室の立ち退き料の相場とは?弁護士が解説

2026-02-08

美容室・理容室の立退きの際には、「立ち退き料」が問題になることがほとんどですが、その相場はどれぐらいでしょうか。

今回は、借主側の立ち退き案件に注力する弁護士が、美容室・理容室の「立ち退き料の相場」について、過去の裁判例をもとに解説します。

1.美容室・理容室の立ち退き料の相場

以下では、美容室・理容室の立退料が問題となった裁判例を紹介します。

立ち退き料に関するイメージを付けて頂ければと思います。

(1)立退料600万円の事例

東京地裁令和6年5月27日判決は、美容室の事例で、立退料として600万円を認めました。

■前提情報

使用目的:美容室

月額賃料:13万2000円(税込)

賃借期間:5年6か月

■立退料の認定額

600万円

※美容室側(テナント側)の主張額は、1443万2730円であった。

■立退料の内訳(①から⑤までの合計額から減額)

①現在の敷金と新しい賃貸借契約の敷金との差額(増額)分→25万9979円

②新しい賃貸借契約のための礼金・仲介手数料→40万円

③造作費用補償→520万円

④引っ越し費用・移転先でのポスティング等の告知費用→合計100万円

⑤営業補償→195万0433円

裁判所は、上記①から⑤の合計額を算出した後に、その3分の2程度である600万円が立退料として相当であると判断しました。

裁判所は、時々、理屈を付けて、このような減額を行ってきます。

その理論上の理由と、実際のところについては、別記事をご参照ください。

(2)立退料1600万円の事例

東京地裁令和5年1月17日判決は、理容室の事例で、立退料として1600万円を認めました。

■前提情報

使用目的:理容室

月額賃料:7万5000円

賃借期間:50年間

■立退料の認定額

1600万円

※理容室(テナント)側にて、立ち退き料に関する具体的な主張は行っていない。

■立退料の内訳(①から⑤の合計額)

①賃料差額補償→360万円

②新規賃貸借契約のための礼金→30万円(4か月分)

③内装工事費・什器備品代→150万円

④移転諸経費(引っ越し代・挨拶状等)→100万円

⑤借家権価格の補償(途中解約解決金)→960万円

※借家権とは、借地借家法が適用される建物の賃借権のことを言います。

そして、借家権価格の補償とは、借主は、借家権自体に認められる財産的価値を建物の明渡しに伴い、喪失することから、これを補償しようとするものです。

(3)立退料1400万円の事例

東京地裁昭和56年4月28日は、美容室の事例で、立ち退き料として1400万円を認めました。

■前提情報

使用目的:美容室

月額賃料:37万0756円

賃借期間:10年間

■立退料の認定額

1400万円

※美容室(テナント)側にて、立ち退き料に関する具体的な主張は行っていない。

■立退料の内訳

判決において明示されていない。

※同判決は、貸主側が1400万円の立退料を提示していること、美容室側も現在はその店舗での営業を行わず、別の場所で営業を行っていることを考慮して、1400万円の立ち退き料が相当であると判断しています。

2.美容室・理容室の立退料の相場に関する考察

一般的に、店舗やテナントの立ち退き料の相場は、月額賃料の2年~3年分程度と言われています(執筆弁護士の肌間隔としては、月額賃料の50か月分が目安となっている印象です)。

そして、上記で紹介した3つの裁判例を見てみると、月額賃料と立退料の対応関係は、下記の形になります。

(1)立退料600万円の事例月額賃料45か月分(月額賃料13万2000円)

(2)立退料1600万円の事例月額賃料213か月分(月額賃料7万5000円)

(3)立退料1400万円の事例月額賃料38か月分(月額賃料37万0756円)


これを見ると、(2)の事例だけ月額賃料との関係で伸びており、(1)や(3)の事例ではあまり月額賃料との関係で伸びていません

この理由として、一番大きいのは、その物件を借りている期間の長さであると考えられます。

(2)の事例は、賃借期間が50年にも及んでいます(もちろん月額賃料が安いというのもありますが)。

他方、(1)の事例は、賃借期間が5年6か月です。

(1)の事例では、裁判所は、算出した補償金額から、立退料としてはこれを3分の2に減額していますが、これも賃借期間を考慮していると考えられます(理論上の理由はさておき)。

というのも、(1)の事例の月額賃料は13万2000円であり、美容室側が貸主にこれまで支払った賃料は合計871万2000円です。

裁判所も、これまでに支払った賃料の合計額を超える、立退料の支払いを認めるのは消極的になりやすいです。

次に、(3)の事例も賃借期間は10年間と、比較的短めになっています。

また、(3)の事例は、そもそも美容室側も既に当該建物で営業を行っていないとの事情もあったので、金額が控えめになっているものと考えられます(そもそも美容室側が、立退料に関する具体的な主張をしていないとの事情もあります)。

以上からして、美容室・理容室の事案では、賃借期間が重要な要素になっています

また、事例ごとに立退料は大きく変わりますが、あくまで目安として申し上げると、美容室・理容室の立ち退き料は、月額賃料の50か月分というのが、一つの目安であると考えています。

但し、本当に事例ごとに異なるので、立ち退きを求められた際には、早期に弁護士に相談に行って頂くことをお勧めいたします。

3.最後に

今回は、美容室・理容室の「立ち退き料の相場」について、解説しました。

当事務所は、1983年創業の法律事務所であり、これまで多数の立ち退き案件に携わってきました。

特に、立ち退きを求められた借主側での対応に注力しており、立ち退き案件について、確かな実績とノウハウを確立しています。

以下は、過去に当事務所が解決した立ち退き案件の一例です。

■立ち退き案件の解決事例

立ち退き交渉で当初立退料950万円から4500万円に増額させた事例

立ち退き交渉で当初提示額の4倍以上の立退料を獲得した事例

また、本記事内で指摘した、裁判所が立退料の減額を行ってくる理論上の理由と、実際のところの詳細については、下記の記事内で解説しています。

飲食店の立ち退き料の相場とは?弁護士が裁判例を基に解説

立ち退きを求められてお困りの事業者様は、お気軽に当事務所にご相談頂ければと思います。

飲食店の立ち退き料の相場とは?弁護士が裁判例を基に解説

2026-02-04

飲食店の立退きでは、ほとんどのケースで「立ち退き料」が必要となり、交渉の場面では、その立ち退き料が適正かどうかが問題になることが多いです。

そこで本記事では、借主側の立ち退き案件に注力する弁護士が、飲食店の「立ち退き料の相場」について、近年の裁判所の判断をもとに解説します。

1.立ち退き料とは

立ち退き料」とは、建物明け渡しにより借主が被る移転費用やその他の損失を補償するための金銭を指します。

法律上、貸主が契約更新を拒絶したり、解約を申し入れるためには、借地借家法28条の「正当事由」が必要とされています。この「正当事由」を補充するための要素として、「立ち退き料」が位置付けられています。

実務上、立ち退き料の金額は、極めて重要な要素となっており、立ち退き料がいくらになるか次第で、借主側の決断が変わるケースも決して珍しくありません。

2.飲食店の立ち退き料の相場

それでは、飲食店の「立ち退き料」の相場は、どれぐらいなのでしょうか。

近年の裁判例を6つまとめましたので、是非参考にされて下さい。

(1)居酒屋の事例

東京地裁令和4年10月28日判決は、居酒屋の事例で、立退料として3058万円を認めました

■前提情報

使用目的:居酒屋

月額賃料:20万2000円

賃借期間:50年

■立退料の認定額

3058万円

■立退料の内訳(アとイの合計金額)

ア 立退きによって生じる損失補償額(合計2550万円)

①家賃補償201万8000円

②営業補償2039万円

③設備機器317万円

上記①から③の合計を端数調整して、2550万円という損失補償額を認定しました。

イ 隣地との併合による増額分(508万円)

貸主側が隣地を所有し、立退きの対象不動産と隣地を併合して有効利用が可能となることによる増分価格508万円を加算しています。

(2)喫茶店の事例

東京地裁令和5年3月23日判決は、喫茶店の事案で、立退料として1940万円を認めました。

■前提情報

使用目的:喫茶店

月額賃料:27万円

賃借期間:20年

■立退料の認定額

1940万円

■立退料の内訳(アとイの合計額)

ア 借家権価格の補償

1610万円

※借家権とは、借地借家法が適用される建物の賃借権のことを言います。

そして、借家権価格の補償とは、借主は、借家権自体に認められる財産的価値を建物の明渡しに伴い、喪失することから、これを補償しようとするものです。

イ 通常生じる損失に対する補償額(合計330万円)

①内部造作等の補償約100万円

②仲介業者の報酬約55万円

③移転先選定調査費用等10万円

④引越し費用その他移転関連雑費約165万円

(3)食堂(定食屋さん)の事例

東京地裁令和4年8月3日判決は、食堂(定食屋さん)の事例で、立退料として2037万5000円を認めました。

■前提情報

使用目的:飲食店

月額賃料:30万円

賃借期間:10年

■立退料の認定額

2037万5000円

■立退料の内訳(アとイの合計額)

ア 借家権価格(800万円)

1200万円と認定した上で、「正当事由」の補完の観点から、3分の2の800万円を立退料の算定の基礎としました。

イ 損失補償(合計1237万5000円)

①工作物補償970万円、

②移転雑費(仲介手数料・移転通知費・就業不能補償)67万5000円

③営業補償を400万円(利益の2年分)

上記①から③の金額を認定した上で、「正当事由」の補完の観点から、③については2分の1である200万円を立退料の算定の基礎としました(①と②は全額立退料の算定の基礎とされています)。

■なぜ金額が減額されているのか(細かい話)

・理論上の話

借地借家法28条により、貸主が契約更新を拒絶したり、解約を申し入れるためには「正当事由」が必要とされています。

そして、この「正当事由」は、①「当事者双方の使用の必要性」が最も重要な要素とされ、補充的に、②「賃貸借に関する従前の経過」、③「建物の利用状況」、④「建物の現況」、⑤「立退料の提供(金額)」の有無を考慮して、総合的に判断されます。

そのため、「立ち退き料」は、あくまでもこの「正当事由」を補充するための要素として、位置づけられているにすぎず、他の正当事由の要素の強弱によって、金額の調整があり得るという特性があります。

それゆえ、裁判例によっては、他の正当事由の要素(特に当事者双方の使用の必要性)の強弱によって、金額を調整しているものも見られ、上記事案は、まさしくそのような事案となっています。

・実際のところ(執筆弁護士の私見)

「立ち退き料」に関する多くの裁判例を分析していても、本事案のように、他の正当事由の要素の強弱によって、金額の調整をしている裁判例は少数派のものになります。

この少数派の裁判例を見ていると、結局のところ、裁判官の感覚からして、「立ち退き料」の金額が高くなりすぎた時に、後付けで理屈を付けて、「立ち退き料」の金額を調整している(下げている)のではないかと考えられます。

例えば、本事案では、金額を下げなかった場合の立退料は、2637万5000円でした。

本事案の月額賃料は30万円ですので、金額を下げなかった場合、立退料は、月額賃料87か月分になります。

裁判例によっては、これぐらいの立退料を認めているものもありますが、問題は本事案の場合、賃借期間が10年にすぎない点です。

金額を下げなかった場合、立退料が7年分以上の賃料に相当するわけで、貸主側は立退料を支払えば3年分の賃料も回収できないことになります。

私見としては、裁判官は、このような事情も加味して、後付けで理屈を付けて、金額を下げたのではないかと考えています。

(4)韓国料理店の事例

東京地裁令和3年11月9日判決は、韓国料理店の事案で、立退料として1838万2000円を認めました。

■前提情報

使用目的:飲食店

賃借期間:9年

月額賃料:19万6460円(管理費込み)

■立退料の認定額

1838万2000円

■立退料の内訳(アとイの合計金額)

ア 借家権価格の補償

690万7000円

※借家権とは、借地借家法が適用される建物の賃借権のことを言います。

そして、借家権価格の補償とは、借主は、借家権自体に認められる財産的価値を建物の明渡しに伴い、喪失することから、これを補償しようとするものです。

イ 移転補償額(下記①から④の合計1147万5000円)

①動産移転補償28万1000円

②借家人補償327万2000円

③移転雑費128万円

④営業休止補償664万2000円

(5)タイ料理店の事例

東京地裁令和3年11月9日判決は、タイ料理店の事案で、立退料として1744万2000円を認めました。

■前提情報

使用目的:飲食店

賃借期間:9年

月額賃料:19万5610円(管理費込み)

■立退料の認定額

1744万2000円

■立退料の内訳(アとイの合計金額)

ア 借家権価格

681万10000円

イ 移転補償額(下記①から⑤の合計1063万1000円)

①動産移転補償28万1000円

②工作物補償12万4000円(居抜きでの入居のため低額になっています)

③借家人補償192万1000円

④移転雑費127万6000円

⑤営業休止補償702万9000円(営業休止期間6か月分)

(6)ラーメン店の事例

東京地裁令和4年5月25日判決は、ラーメン店の事案で、立退料として855万9086円を認めました。

■前提情報

使用目的:ラーメン店

月額賃料:19万円

賃借期間:20年

■立退料の認定額

855万9086円

■立退料の内訳(①から⑤の合計額)

①新しい賃貸借契約のための初期費用合計204万5000円

(保証金・敷金150万円、礼金25万円、仲介手数料27万5000円、火災保険料2万円)

②移転費用460万円

③動産解体費用及び雑費100万円

④休業補償30万4695円(3か月分)

⑤家賃増加による営業利益低下分60万9391円(2年分)

3.飲食店の立ち退き料の相場に関する考察

上記で紹介した6つの裁判例を見てみると、月額賃料と立退料の対応関係は、下記の形になります。

(1)居酒屋の事例月額賃料151か月分(立退料3058万円)

(2)喫茶店の事例月額賃料71か月分(立退料1940万円)

(3)食堂の事例月額賃料67か月分(立退料2037万5000円)

(4)韓国料理店の事例月額賃料93か月分(立退料1838万2000円)

(5)タイ料理店の事例月額賃料89か月分(立退料1744万2000円)

(6)ラーメン店の事例月額賃料45か月分(立退料855万9086円)

一般的に、店舗やテナントの立ち退き料の相場は、月額賃料の2年~3年分程度と言われています(執筆弁護士の肌間隔としては、月額賃料の50か月分が目安となっている印象です)。

他方、上記の通り、飲食店の事案については、その相場よりも、高い立ち退き料が認められる傾向にあります。

これは、飲食店は、立ち退きを行うことにより、顧客を失いやすく営業補償が認定されやすいことと、営業休止が必要になったり、設備や動産等に関する移転費用や設備補償が高めに認定されやすいことに起因するものと考えられます。

但し、この辺りは、事例ごとに判断が変わるため、立ち退きを求められた際には、早期に弁護士に相談に行って頂くことをお勧めいたします。

4.最後に

今回は、飲食店の「立ち退き料の相場」について、解説しました。

当事務所は、1983年創業の法律事務所であり、これまで多数の立ち退き案件に携わってきました。

特に、立ち退きを求められた借主側での対応に注力しており、立ち退き案件について、確かな実績とノウハウを確立しています。

以下は、過去に当事務所が解決した立ち退き案件の一例です。

■立ち退き案件の解決事例

立ち退き交渉で当初立退料950万円から4500万円に増額させた事例

立ち退き交渉で当初提示額の4倍以上の立退料を獲得した事例



また、立ち退き料の内訳について、解説した記事も併せて、参考にされて下さい。

■関連記事

立ち退き料とは?主な内訳について弁護士が解説


立ち退きを求められてお困りの事業者様は、お気軽にご相談頂ければと思います。

立ち退き料とは?主な内訳についても弁護士が解説

2026-01-25

テナントの立ち退きの際には、多くのケースで「立ち退き料」が問題となります。

そこで今回は、「立ち退き料」とは何かや、主な内訳について、借主側での立ち退き案件に注力する弁護士が解説します。

1.立ち退き料とは

「立ち退き料」とは、建物明け渡しにより借主が被る移転費用やその他の損失を補償するための金銭を指します

借地借家法28条により、貸主が契約更新を拒絶したり、解約を申し入れるためには「正当事由」が必要とされています。この「正当事由」を補充するための要素として、「立ち退き料」が位置付けられています。

実務上、立ち退き料の金額は、極めて重要な要素となっており、立ち退き料がいくらになるか次第で、借主側の決断が変わることも珍しくありません。

2.立ち退き料の主な内訳

それでは、「立ち退き料」の判断に際しては、どのような要素が考慮されるのでしょうか。以下では、多くの裁判例で考慮されている要素を、一つ一つ見ていきます。

(1)移転関連費用

まずは、移転関連で発生する費用です。

この費用には、①引っ越し費用、②新しい賃貸契約のために必要な礼金・仲介手数料、③移転通知費などが含まれます。

なお、新しい賃貸借契約のための敷金については、将来的に返還されるものであるため、敷金自体は費用として計上していない裁判例が多いです。

但し、現在の契約を解除したことにより返還される敷金が、新しい契約の敷金の金額に足りない場合には、この足りない差額部分の運用益(運用期間は10年ほど)を、移転関連費用として計上している裁判例も存在します。

(2)新規賃料と現行賃料との差額(賃料増額分)

次に、移転先の賃料と現在の賃料との差額に関する損失です。

例えば、移転先の賃料が月額100万円、現在の賃料が月額50万円であれば、この賃料差額の月額50万円が損失になります。

但し、裁判の際に、移転先の賃料として認められるのは、現在の建物と同種同等の建物の賃料です。移転先をグレードアップさせた場合に、そのグレードアップさせた賃料との差額までは認められないことに、注意が必要です。

また、この賃料差額分の損失については、無制限の期間が認められるわけではなく、概ね1年間~3年間の期間の損失が認められています。

■具体例

移転先の賃料が月額100万円、現在の賃料が月額50万円で、移転先の建物も現在の建物と同種同等の建物である。

この場合には、賃料差額分50万円×1年間~3年間の期間に相当する損失が認められる形になります。

1年間の場合には600万円(50万円×12か月)、3年間の場合には1800万円(50万円×36か月)となります。

(3)工作物の補償(移転先の内装工事費用)

次に、工作物の補償です。この工作物の補償には、物理的・経済的に移設が困難な工作物についての費用が含まれ、主に内装工事費用が問題になってきます

この工作物の補償については、貸主側から、①既に減価償却済みとなっている古い工作物の費用についてまで補償するのは認められないであったり、②立ち退き料の算定の際に、移転先の内装費用全額までをも認めることはできない等との反論がされることが多いです。

しかし、①について、減価償却済みであっても、現実には価値を有する工作物については、補償の対象とすべきであり、裁判例でもこの点を含める判断をしている方が多いです。

もっとも、②については、内装費用全額を立退料の対象とするのでは、賃貸人の負担により経年した工作物を新品と入れ替えることになり妥当ではないと判断している裁判例もあるため、注意が必要です(事例ごとに判断が分かれている印象です)。

(4)営業再開までの休業損失

次に、移転に伴い、休業が必要になる場合には、休業損失が算定されます

予想される休業期間に、営業利益等を掛けて、休業損失を算定することになります。

また、休業期間中の従業員に対する手当相当額の補償なども、損失として認定されることが多いです。

(5)移転による顧客喪失等の損失

次に、移転によって顧客を失うことに対する損失の補償です。

居酒屋・喫茶店・レストランなどの飲食店、スーパーマーケット、美容院や整体院など、移転により一時的に顧客を失って、収入の減少が見込まれる場合には、その減少分が補償されることになります。

この減少分や、減少期間については、具体的な事案ごとに、証拠に基づき適切に主張していくことが重要です。

(6)借家権価格の補償

借家権とは、借地借家法が適用される建物の賃借権のことを言います。

そして、借家権価格の補償とは、借主は、借家権自体に認められる財産的価値を建物の明渡しに伴い、喪失することから、これを補償しようとするものです。

最近の裁判例を分析すると、この借家権価格の補償を行っているものと、行っていないものがあり、その割合も半数ずつぐらいになっています。

■細かい話の部分

この借家権価格の補償を行う場合には、上記(2)の「新規賃料と現行賃料との差額(賃料増額分)」は考慮されない取り扱いになっています。

これは、借家権価格の中に、上記(2)の差額賃料の補償も含まれているので、借家権価格の他に、上記(2)の差額賃料の補償を行うと、二重計上になってしまうためです。

そして、上記(2)の差額賃料の補償だけではカバーしてきれない価値が、借家権価格に存在する場合(借家権の取引慣行がある場合など)には、借主側は、借家権価格についても積極的に主張していくべきです。

なお、あくまで私見ですが、最近の裁判例において、借家権価格の補償を行っていない事例は、借家権価格に、上記(2)の差額賃料の補償だけではカバーしきれない価値が含まれていない事案(なので、わざわざ別途借家権価格を考慮する必要のない事案)のように思われます。

3.最後に

今回は、「立ち退き料」とは何かや、その主な内訳について、解説しました。

立退料の提示を受けて、その金額が妥当か否か、お悩みのテナント(借主)の方は、まずは、弁護士に相談されることをお勧めします。

なぜなら、立退料の金額が妥当かを、自社のみで判断することは困難だからです。

当事務所は、1983年に創業した法律事務所であり、これまで多数の立ち退き案件に携わってきました。

特に、立ち退きを求められた借主側での対応に注力しており、立ち退き案件について、確かな実績とノウハウを確立しています。

以下はあくまで一例になりますが、過去の立ち退き案件についての、当事務所の解決事例です。

■立ち退き案件の解決事例(借主側)

立ち退き交渉で当初立退料950万円から4500万円に増額させた事例

立ち退き交渉で当初提示額の4倍以上の立退料を獲得した事例

立ち退きを求められてお困りの事業者様は、お気軽にご相談ください。

再開発を理由に立ち退きを求められた時の注意点とは?

2026-01-18

近年、再開発を理由とした立ち退き要請が増えています。

再開発による立ち退き要請を受けた場合、通常の立ち退きとは異なる点があり、注意が必要です。

今回は、再開発を理由に立ち退きを求められた時の注意点について、借主側での立ち退き案件に注力する弁護士が解説します。

1.再開発にも種類がある

まず、「再開発」には、2種類のものが存在します

都市再開発法という法律に基づく再開発と、②法律に基づかない再開発です。

この①の法律に基づく再開発は、一般的に「法定再開発」と言われ、通常の立ち退きとは異なる独自のルールが適用されるため、注意が必要です。

他方、②の法律に基づかない再開発については、通常の立ち退きと同様の問題が生じるにとどまり、法定再開発のような独自のルールは適用されません。

2.法定再開発の場合の注意点

(1)強制的に立ち退きをさせる手段がある

通常の立ち退きと最も大きく異なる点は、相手方が強制的に立ち退きを実現する手段を有している点です。

具体的には、法定再開発の場合、最終的には行政代執行法に基づく強制的な明渡しが行われる可能性があります

実務上、このような強制的手段が実際に用いられる場面は極めて限定的であり、慎重な運用がなされています。

しかし、相手方がこの手段を持っているせいで、立ち退き要請を拒否し続けることが事実上難しくなっています。

(2)「権利変換」か「立ち退き料受け取り」かを選択する

法定再開発の場合には、解決手段として、次のいずれかを選択することになります

再開発後の新しい建物での権利を取得する「権利変換」

再開発区域から退去する代わりに立ち退き料(補償金)を受け取る

どちらを選択するかは、その再開発区域での営業や居住をどこまで重視されるかによっても異なります。

ただし、一般的に、再開発区域に戻り新しい建物で営業等を再開できるまでには、4年以上かかる場合が多いといわれています。

そのため、事業継続や生活設計を踏まえた慎重な判断が求められます。

(3)立ち退き料等の支払基準がある

法定再開発の場合には、立ち退き料等の支払に関して、用地対策連絡協議会基準(「用対連基準」と言われています)に基づき算定されます。

この基準は、立ち退き料のみならず、法定再開発の際に生じる損害一般の支払に関する基準になります。

立ち退きを求められている側が、相手方の提示金額に異議を述べるためには、この「用対連基準」に基づき、損害額を算定して反論することが必要です。

3.まずは弁護士に相談を

再開発を理由に立ち退きを求められた場合、まずは、立ち退き案件に注力する弁護士に相談されるのをお勧めします。

なぜなら、再開発を理由とした立ち退きは通常の立ち退きとは異なる複雑な規律が関わるため、早期に専門家の助言を得ることが、重要だからです。

立ち退き要請を受けてから時間が経過すると、対応の選択肢が制限される場合もあります。

そのため、再開発を理由とする立ち退き要請を受けた時から、早めに方針を立てることが、権利保護のために非常に重要です。

4.最後に

今回は、再開発を理由に立ち退きを求められた時の注意点について、解説しました。

当事務所は、1983年に創業した法律事務所であり、これまで多数の立ち退き案件に携わってきました。

特に、立ち退きを求められた借主側での対応に注力しており、立ち退き案件について、確かな実績とノウハウを確立しております。

当然、再開発を理由とする立ち退き案件についても対応経験がございます。

再開発を理由に、立ち退きを求められてお困りの事業者様は、お気軽にご相談ください。

立ち退きの際に問題となる「正当事由」とは?弁護士が解説

2026-01-11

テナントの立ち退きの際には、多くのケースで、「正当事由」があるかが問題となります。

この「正当事由」は、立退料との関係でも問題となりますが、「正当事由」とは一体何なのでしょうか。

今回は、立ち退きの際に問題となる「正当事由」について、借主側での立ち退き案件に注力する弁護士が解説します。

1.正当事由とは

「正当事由」とは土地や建物の賃貸借契約の際に、貸主側から更新を拒絶したり、解約を申し入れるために、必要とされる事由のことを言います。

借地借家法が適用される土地・建物については、その場所が賃借人の生活の拠点となるため、賃借人の保護を図る必要があります。

そのため、借地借家法においては、貸主側からの更新拒絶や解約申し入れの際には、

この「正当事由」を要求することにより、賃借人を保護しています。

仮に、貸主側が、賃貸借契約の更新拒絶や解約申入れをしても、「正当事由」がなければ、かかる更新拒絶や解約申入れが認められないことになります。

2.正当事由の考慮要素について

それでは、「正当事由」の判断に際して、どのような事情が考慮されるのでしょうか。

結論としては、①「当事者双方の使用の必要性」が最も重要な要素とされ、補充的に②「賃貸借に関する従前の経過」、③「建物の利用状況」、④「建物の現況」、⑤「立退料の提供(金額)」の有無を考慮して、総合的に判断されます。

以下では、一つ一つ、考慮要素をみていきます。

(1)①当事者双方の使用の必要性

これは、貸主と借主の双方が、賃借不動産を使用する必要性が、それぞれどのぐらい大きいのかという要素になります。

貸主側の必要性としては、居住の必要性、老朽化による建替(解体)の必要性、建物売却の必要性、建物の第三者使用の必要性などが挙げられます。実務上、貸主側の主張としてよく見るのは、老朽化による立替(解体)の必要性です。

対して、借主側の必要性としては、営業の必要性や居住の必要性などが挙げられます。

立退きを求められた際に、テナント(借主)側としては、他の建物でなくこの建物で営業を行っていく必要性が大きいということを、具体的事実をもとに主張していくことが重要です。

この当事者双方の不動産使用の必要性が、「正当事由」の判断に際して、最も重要な要素になります。

(2)②賃貸借に関する従前の経過

以下の②から⑤の要素は、補充的な要素となります。

②の「賃貸借に関する従前の経過」では、過去の貸主・借主の債務不履行の存否、設定以来の期間の長短、賃料額の相当性、契約当初の権利金や更新料の有無などが考慮されます。

例えば、過去に借主側に、賃料不払い・無断増改築・無断転貸などの債務不履行があった場合には、借主側にとって不利な要素となります。但し、実際上は、その内容がどの程度当事者の信頼関係に影響を与えるのかが具体的に判断されることになります。

逆に貸主側が、借主に立退きを求めて、悪質な妨害行為を行っていたなどの事情は、借主側にとっては有利な事情とされます。

また、賃貸借契約を締結してからの期間が長いことは借主側にとって有利な事情となり、反対に期間が短いことは貸主側にとって有利な事情になります。

(3)③建物の利用状況

この要素では、借主が契約目的に従って、建物を適法かつ有効に使用収益しているのかどうか、借主が他に建物を所有ないし賃借していて、建物をあまり利用していないかなどが判断されます。

要は、建物の利用状況として、適切に、しっかり建物が利用されていますかとの考慮要素になります。

(4)④建物の現況

この要素では、建物自体の物理的状況、すなわち、建替えの必要性が生じているか否かなどが判断されます。

具体的には、建物の老朽化の状況や、建物が社会的・経済的効用を失っているか否かなどが判断されます。

(5)⑤立退料の提供(金額)

最後に、立退料支払いの申出の有無や、立退料の金額が、考慮されます。

立退料は、法律上は、あくまで補充的な要素とされていますが、実務上は、立退きの合意に至るか否かも含めて、極めて重要な要素となっています。

立退料の金額については、上記の①から④までの要素も考慮して、決定していくため、①から④の要素は、立退料の金額を決める上でも、重要な役割を果たしています。

3.実務上のポイント

上記の各要素を考慮した上で、貸主側に更新拒絶などを行う「正当な事由」があると認められる場合には、借主側は立退きを拒否できないことになります(但し、立退料が支払われるケースがほとんどです)。

そして、オーナー側から立ち退きを求められたら、まずは、立退き案件に注力する弁護士に相談されることをお勧めします

なぜなら、弁護士に相談せずに、貸主側と交渉をして、極めて不利な条件での立退きに応じているケースを、これまで多く見てきたためです。

オーナー(貸主)側とテナント(借主)側では、立退きに関する情報格差があることが通常なので、借主側においても、適切に情報を収集する必要があります。

仮に、貴社において絶対に立ち退かないと判断されたとしても、貸主側の本気度によっては、裁判等の紛争に巻き込まれることになります。今後どのような流れで手続きが進んでいくのかも含めて、弁護士に相談された上で、結論を出された方が、より良い判断につながるかと思います。

4.最後に

今回は、立ち退きの際に問題となる「正当事由」について、解説しました。

当事務所は、1983年に創業した法律事務所であり、これまで多数の立ち退き案件に携わってきました。

特に、立ち退きを求められた借主側での対応に注力しており、立ち退き案件について、確かな実績とノウハウを確立しています。

以下はあくまで一例になりますが、過去の立ち退き案件についての、当事務所の解決事例です。

■立ち退き案件の解決事例(借主側)

立ち退き交渉で当初立退料950万円から4500万円に増額させた事例

立ち退き交渉で当初提示額の4倍以上の立退料を獲得した事例

立ち退きを求められてお困りの事業者様は、お気軽にご相談ください。

テナント側が立ち退き要請を拒否できないケースとは?

2026-01-05

店舗やビルの一区画を借りて営業をしていると、突然、オーナー側から、建物の明け渡しを求められることがあります。

このような場合、テナント(借主)側は、立ち退きに応じなければならないのでしょうか。

今回は、テナント側が立ち退き要請を拒否できないケースについて、借主側での立ち退き案件に注力する弁護士が解説します。

1.テナント側に債務不履行がある場合

1つ目のケースは、テナント側に債務不履行がある場合です。

例えば、賃料不払いや、賃借建物の目的外使用(例:使用目的を事務所と定めたのに飲食店を開店する)、無断増改築をした場合などが挙げられます。

但し、厳密には、テナント側に上記のような債務不履行があることに加えて、その債務不履行が賃貸人との間の「信頼関係を破壊する」程度に至る場合に限り、立ち退き要請を拒否できないことになります。

なぜなら、賃貸借契約がオーナー側と借主側の信頼関係を基礎とした契約であり、信頼関係を破壊しない程度の義務違反により、契約を解除できるとすることは不合理であるためです。

2.借地借家法上、更新が不要な賃貸借契約の場合

次に、借地借家法上、更新が不要な賃貸借契約の場合です。

具体的には、①定期建物賃貸借契約、②一時使用目的の建物の賃貸借契約、③取り壊し予定の建物の賃貸借契約の場合です。

(1)定期建物賃貸借契約

定期建物賃貸借契約とは、契約で定めた期間が終了することによって、更新されることなく、確定的に賃貸借契約が終了する制度のことを言います

この契約の場合、契約期間満了を理由とした立ち退き要請であれば、テナント側は立ち退きを拒否できません。

但し、定期建物賃貸借契約を有効に行うためには、貸主側が借主側に対して、契約締結前に、契約の更新がなく、期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨を記載した書面を交付して説明をすることが必要になります。実務上、この事前説明書面の交付ができておらず、契約書には「定期建物賃貸借契約」と記載されているものの、実際上は「普通賃貸借契約」となっている事例もあります。

(2)一時使用目的の建物の賃貸借契約

建物の賃貸借契約であっても、「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合」には、契約の更新が不要となります。

そのため、一時使用目的の建物の賃貸借契約と評価される場合には、テナント側は立ち退き要請を拒否できないことになります

但し、「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合」と言えるためには賃貸借契約締結の動機、目的建物の種類、構造、賃借人の賃借目的及び契約後の使用状況、賃料その他の対価の多寡、期間その他の契約条件等の諸要素を総合的に勘案し長期継続が予期される通常の借家契約をなしたものでないと認める合理的な事情が客観的に認定される必要があります

実務上、このハードルは相当程度高く、契約書に「一時使用目的の建物の賃貸借契約」と記載されていても、実際上は「普通賃貸借契約」と認定されうる事例も存在します。

(3)取り壊し予定の建物の賃貸借契約

建物の賃貸借契約であっても、「法令又は契約により一定の期間を経過した後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合」には、建物取り壊し時に賃貸借が終了する旨を定めることができます。

これを、「取り壊し予定の建物の賃貸借契約」と言います。

この契約を締結している場合には、建物取り壊し時の立ち退き要請であれば、テナント側は立ち退きを拒否できません

但し、この契約が適用されるのは、かなり限定的な場面になります。

なぜなら、適用範囲が、「法令又は契約により」建物を取り壊さなければならない場面に限られているからです。

具体的には、都市計画法などの法令により建物を取り壊さなければならない場合や、定期借地契約により借地期間満了時に建物を取り壊さなければならない場合などに限られています。

すなわち、オーナー側が今後建物を建替予定であるにすぎない場合には、この契約類型は使用できません。

3.「正当な事由」があると認められる場合

上記のような特別な賃貸借契約でない場合にも、借地借家法上の「正当な事由」があると認められる場合には、立ち退きを拒否できません

「正当な事由」の詳細については、次の記事で解説しますが、過去の裁判例を見ても、ほとんどの場合、この「正当な事由」を満たすためには、貸主側において、立退料を支払うことが求められています。

■正当な事由の考慮要素

・主たる要素

貸主側が建物の使用を必要とする事情(居住の必要性、老朽化による建替の必要性、建物売却の必要性など)

借主側が建物の使用を必要とする事情(営業の必要性、居住の必要性など)

・補充的な要素

建物の賃貸借に関する従前の経過(過去の借主側の債務不履行の存否、設定以来の期間の長短、賃料額の相当性、契約当初の権利金や更新料の有無など)

建物の利用状況

建物の現況(老朽化による建替の必要性があるか否かなど)

立退料の支払い申出の有無、及び、立退料の金額

4.都市再開発法に基づく再開発の場合

最後に、都市再開発法に基づく再開発を理由とする立ち退き要請についても、借主側は、基本的には、立ち退きを拒否できません

なぜなら、この場合、行政側は、最終的には強制的に土地収用を行うことができるためです。

そのため、都市再開発法に基づく再開発を理由とする立ち退き要請についても、借主側は、どこかで立ち退きに応じる必要が出てきます。

5.立ち退きを求められたら弁護士に相談を

オーナー側から立ち退きを求められた場合まずは、立ち退き案件に注力する弁護士に相談されるべきです

なぜなら、自社が立ち退く必要があるか否かの検討や、今後オーナー側とどのように交渉を行っていくべきかなどについては、立ち退き案件に注力する弁護士に相談しなければ、判断することが難しいためです。

また、立ち退き案件は、弁護士業務の中でも少し特殊な分野であり、弁護士であっても、これまで取り扱ったことがない人も多くいます。

そのため、貸主側から立ち退きを求められたら、まずは、立ち退き案件に注力している弁護士に相談されることをお勧めします。

6.最後に

今回は、テナント側が立ち退き要請を拒否できないケースについて、解説しました。

当事務所は、1983年創業の法律事務所であり、これまで多数の立ち退き案件に携わってきました。

特に、立ち退きを求められた借主側での対応に注力しており、立ち退き案件について、確かな実績とノウハウを確立しています。

以下はほんの一例ですが、当事務所が対応した、過去の立ち退き案件についての、解決事例になります。

■立ち退き案件の解決事例(借主側)

立ち退き交渉で当初立退料950万円から4500万円に増額させた事例

立ち退き交渉で当初提示額の4倍以上の立退料を獲得した事例


立ち退きを求められてお困りの事業者の方は、お気軽にご相談ください。

立ち退きを求められた時に借主側が最初にすべきこと

2025-12-30

店舗や事務所を借りて営業をしていると、突然、貸主側から、建物の明け渡しを求められることがあります。

オーナー側が立ち退きを求める理由(建替え・売却・自己使用など)は様々ですが、借主側にとっては、自社の経営に直結する重大な問題です。

適切に対応しないと、受け取れるはずだった立退料を逃したり、不利な条件で退去してしまう恐れもあります。

そこで、今回は、立ち退きを求められた時に借主(テナント)側が最初にすべきことを、立ち退き案件に注力する弁護士が解説します。

1.契約書と通知内容を確認する

まず行うべきは、賃貸借契約書と通知内容の確認です。

(1)賃貸借契約書の確認

契約書を見て、自社の賃貸借契約が、定期建物賃借契約なのか否かを確認する必要があります

定期建物賃貸借契約の場合、契約を更新しないことが法律上認められています。

そのため、定期建物賃貸借契約の場合には、貸主からの通知が、契約期間満了を理由とするものであれば、借主は立ち退かなければならない可能性が高いです

他方、それ以外の賃貸借契約の場合賃貸借契約の契約期間満了後も、通常は、自動更新が認められるため、借主側の権利が保護されることになります


(※定期建物賃貸借契約の場合、貸主側は借主側に対して、契約締結前に、契約の更新がなく、期間の満了により建物の賃貸借が終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明をしなければなりません。これが出来ておらず、賃貸借契約書に定期建物賃貸借契約と記載されていても、普通賃貸借契約と評価されることはあります)

(2)通知内容の確認

通知内容の確認の際には、借主(テナント)側の違反行為が記載されているかを確認します

借主側の違反行為が記載されている場合には、借主側(貴社)の認識として、①その違反行為が実際に行われているか否かを自社で確認するとともに、②仮に違反行為があったとしても、その違反の程度が、建物の明け渡しを求められるほど重大なものなのかについて、弁護士などに相談しながら、検討することになります。

他方、通知内容の中で、借主側の違反行為に特段触れられていない場合には、借主の違反を理由とした明け渡し請求ではないため、通常は、借主側の権利が保護されることになります

2.「正当事由」の有無を見極める

上記2点をご確認頂き、問題なさそうな場合、貸主側が建物の明け渡しを求めるためには、原則として、借地借家法上の「正当な事由」が必要となります。

そして、過去の裁判例を見ても、ほとんどの場合、この「正当な事由」を満たすためには、貸主側において、立退料を支払うことが求められています

■正当事由の考慮要素

貸主(オーナー)側が建物の使用を必要とする事情

借主(テナント)側が建物の使用を必要とする事情

建物の賃貸借に関する従前の経過

建物の利用状況

建物の現況

立退料の支払い申出の有無、及び、立退料の金額

3.立ち退き要請に対する大まかな方針を立てる

立ち退きを求められた場合、借主側として、納得できないし、絶対に立ち退かないとお考えになること自体は、ある種当然の感情だと思います。

もっとも、貸主側の本気度次第では、調停や訴訟といった裁判手続きに巻き込まれてしまうこともありますし、立退料次第では、立ち退くことを選択肢に入れることも、あり得る判断だと思います。

そのため、まずは、①絶対に立ち退かないのか、又は、②立退料次第では立ち退くことも検討するのかという、自社の大まかな方針は立てておかれる方がよいです。

4.まずは弁護士に相談を

貸主側から立ち退きを求められた場合、まずは、立ち退き案件に注力する弁護士に相談されるべきです

なぜなら、自社が立ち退く必要があるか否かや、今後どのように交渉を行っていくべきかなどは、立ち退き案件に注力する弁護士に相談しなければ、判断することが難しいためです。

実際、弁護士に相談せずに、貸主側と交渉をして、法的に見て、極めて低額の立退料で立ち退きに応じているケースも多いです

また、立ち退き案件は弁護士業務の中でも特殊な領域であり、弁護士の中でも、これまで立ち退き案件に対応したことがない方も多くいます。

そのため、貸主側から立ち退きを求められたら、まずは、立ち退き案件に注力している弁護士に相談してみてください。

5.最後に

今回は、立ち退きを求められた時に借主(テナント)側が最初にすべきことを、解説しました。

当事務所は、1983年に創業した法律事務所であり、これまで多数の立ち退き案件に携わってきました。

特に、立ち退きを求められた借主側での対応に注力しており、立ち退き案件について、確かな実績とノウハウを確立してきました。

以下はほんの一例ですが、過去の立ち退き案件の解決事例になります。

■立ち退き案件の解決事例

①立ち退き交渉で当初立退料950万円から4500万円に増額させた事例

②立ち退き交渉で当初提示額の4倍以上の立退料を獲得した事例

立ち退きを求められてお困りの事業者様は、お気軽にご相談ください。

自社との業務委託契約者による顧客の引き抜きは違法?

2025-11-03

自社と業務委託契約を締結していた人が、自社の顧客を引き抜くことは、法的に許されるのでしょうか。

過去には、自社の元従業員、自社の顧客を引き抜くことが許されるのかという点について、解説しました。

■過去のコラム

退職した元従業員による顧客の引き抜きは違法?企業側の弁護士が解説

元従業員からの顧客引き抜きに対する防止策

今回は、業務委託契約者による顧客の引き抜きが法的に許容されるかについて、企業側で労働問題に注力する弁護士が解説します。

1.業務委託契約者による顧客の引き抜きは違法か?

自社と業務委託契約をしていた人が顧客を引き抜いても、原則として、合法とされる傾向にあります

なぜなら、業務委託契約の場合には、雇用契約(従業員)の場合のような競業避止義務を負っていないためです。

但し、この種の案件における裁判所の傾向を考えると、顧客の引き抜きにより、会社の経営を左右するほどの重大な損害を発生させる場合など、社会的相当性を逸脱したと評価される場合には、業務委託契約者による顧客の引き抜きが違法とされる可能性はあります


■契約書がある場合

業務委託を締結している場合には、業務委託契約書を締結していることも多いです。

そして、その契約書の中で、契約終了後に顧客の引き抜きを行わないとの規定がされていることもあります

そのような場合には、この顧客の引抜き禁止条項が有効か否かの検討が必要になります裁判例でも、このような条項が無効とされていることもあります

この問題については、①取引の禁止期間が設けられていること、②取引を禁止する顧客の範囲が限定されていることなどがポイントになります。

①の取引禁止期間については、1年以内であれば有効とされやすく、2年の場合には有効と無効で判断が分かれる傾向にあります。

②については、業務委託契約中に担当した顧客など、一定の限定がかけられているかがポイントになります。

2.顧客引き抜きの防止策

中小企業においては、業務委託契約書のひな形をそのまま使用したり、中には、業務委託契約書さえ締結していない企業さえあります。

しかし、それでは、業務委託契約者による顧客の引き抜きを法的に防ぐことができません。裁判例でも顧客の引抜き禁止条項が無効とされている例があるので、顧客の引き抜きを防止するためには、自社の状況に応じて、適切に業務委託契約書を作成する必要があります

業務委託契約者による顧客引き抜きを適切に防止するためには、この種の問題に精通した弁護士に相談すべきです。

3.最後に

今回は、自社との業務委託契約者による顧客の引き抜きが許されるかについて、解説しました。

顧客の引き抜きの問題が発生した場合には、すぐに弁護士に相談して、適切な対応を打つべきです。なぜなら、その時点で適切に対応を打たなければ、過去にその会社が引抜きの問題に適切に対応しなかったということを自社の従業員や業務委託契約者に見せてしまうことになります。これにより、その後も何度も引き抜きの問題が繰り返されることにもなりかねません

京都の益川総合法律事務所は、1983年の創業以来、東証プライム上場企業から中小企業、個人事業主の方の顧問弁護士として、これまで数多くの労働問題を解決してきました。

本件のような、顧客の引き抜きの問題についても、確かな対応実績を有しております。

顧客の引き抜きについて、お困りの企業経営者の方がおられましたら、お気軽に当事務所までご相談ください。

顧問弁護士の選び方

2025-10-23

顧問弁護士と契約したいと思っても、どのような弁護士を選べば良いのかが分からず、お悩みの方も多いことでしょう。

企業が円滑に事業を運営して成長していくために、顧問弁護士の力は大きく役立ちます。しかし、顧問弁護士の選び方を誤ると、思うように成果が上がらず、費用の負担だけが増えることにもなりかねません。

そこで、今回は、顧問弁護士を選ぶときに知っておくべきことについて、解説します。

1 顧問弁護士の役割

顧問弁護士の重要な役割は、日頃から企業の経営を法的観点からサポートすることにより、トラブルの発生を未然に防ぐことです。

具体的には、契約書のリーガルチェックから就業規則や社内規程の見直し・整備、取引先や顧客とのトラブルが発生しそうな時のアドバイスなど、必要に応じて、対応策をアドバイスしてくれます。

また、顧問契約をしていれば、何か問題が発生した時もすぐに相談できますので、トラブルの発生防止や早期解決につながります

仮に、企業が法的トラブルに巻き込まれた場合には、顧問弁護士に裁判や示談交渉を依頼することにより、迅速かつ適切な解決を目指すことが可能です。

顧問弁護士を探す際には、このような役割を十分に果たせる弁護士を選ぶことが重要となります。

2 顧問弁護士の選び方

顧問弁護士を選ぶときには、以下の4つのポイントから判断することをおすすめします。

(1)企業法務の経験を豊富に有するか

大前提として、顧問弁護士を依頼するなら、企業法務の経験を豊富に有する弁護士を選ぶべきです。

弁護士の取り扱い業務は多岐にわたりますが、企業法務に対応するためには特有の知識やノウハウが要求されます

しかし、すべての弁護士が企業法務に注力しているわけではなく、全く企業法務に取り組んでいない弁護士も多くいます。

弁護士といえども、経験が浅い分野で的確に対応するのは難しいこともありますので、企業法務の経験が豊富な弁護士を選ぶことは必須な条件といえます。

(2)幅広い分野に対応しているか

一言で企業法務と言っても、その中には、労働問題や取引先への債権回収、顧客からのクレーム対応、契約書の作成・チェック、訴訟・紛争対応をはじめとして、幅広い分野があります

そして、大企業であれば、顧問弁護士を複数抱えることが多いので、問題になりませんが、中小企業の場合には、顧問弁護士として、1事務所だけと契約することが多いです。

そうすると、中小企業の場合、その顧問弁護士に対して、自社で発生するあらゆる法的問題について、相談することになります。

このような中小企業の相談に的確に対応するためには、契約する顧問弁護士が幅広い分野に対応できることが必要になるのです

企業法務に注力する弁護士の中にも、特に専門分野を絞って対応している弁護士もいますので、この辺りは、事前に確認をしておくのが良いかと思います。

(3)相談しやすいか

顧問契約をしたら、日頃から顧問弁護士とのコミュニケーションを取ることが大切です。そのため、相談しやすい弁護士を選んだ方がよいでしょう。

また、企業経営をしていると緊急の対応を要したり、速やかに対応すべき問題も発生するでしょう。

そのような時に、レスポンス(反応)が遅い弁護士にはストレスがかかりますので、レスポンスが早い弁護士を選ぶのがよいでしょう。

(4)裁判の経験が豊富であるか

顧問弁護士は、日々の企業からのトラブル相談についても、裁判になった場合にはどうなるかを検討した上で、対応策を伝えることになります。裁判で勝てそうであれば企業としても強気に対応して良いですし、裁判で負ける可能性があれば落としどころを見つけた上で、速やかに解決すべき問題といえます。

また、契約書の作成やリーガルチェックの際にも、仮に裁判になった場合に戦いやすいように条項を作成していくことになります。

このように、日々の顧問業務についても、顧問弁護士は裁判での経験をもとに見通しを立てて検討していくことになりますが、裁判の経験が乏しいとこの見通しの精度も低くなってしまいます

また、仮に、紛争が激化して、裁判になった場合にも、裁判経験が乏しい顧問弁護士に、裁判を依頼するのもご不安だと思います。

そのため、裁判の経験が豊富かは、確認しておいた方がよいでしょう。

特に、企業側での裁判の場合、企業側特有の問題や検討課題が生じることも多いので、企業側での裁判経験が豊富かを確認しておくと良いでしょう

3 顧問弁護士の探し方と契約するまでの流れ

知人から紹介された弁護士と顧問契約を結ぶのもよいですが、その場合でも、紹介された弁護士が上記の4つの条件を満たしているかどうかは、しっかり確認すべきです。

知人から紹介された弁護士との相性が合わなさそうであったり、弁護士に心当たりがない場合は、インターネットで検索するなどして、企業法務の経験が豊富な法律事務所を探すのがおすすめです。

気になる事務所が見つかったら、法律相談の予約を取り、実際に弁護士と話してみると良いでしょう。

担当の弁護士が信頼できると判断したら、顧問契約の内容や料金について協議した上で、顧問契約を結びます。

初回の相談には無料で対応している事務所もありますので、場合によっては、複数の事務所で相談をしてみて、比較・検討するのも良いでしょう。

4 顧問弁護士をお考えの方は当事務所まで

当事務所は、1983年の創業以来、東証プライム上場企業から中小企業、個人事業主の方の顧問弁護士として、多種多様なご相談を解決してきました。

顧問をさせていただいている会社の業種も豊富であり、様々な業種の内情を把握していると自負しております。

これまで様々な会社の顧問弁護士として、本当に数多くのご相談に対応してきましたので、きっとお役に立てると思います。

顧問料については、実際にお話を伺い、協議の上、設定させていただきます。

初回相談は原則無料としておりますので、顧問弁護士をお考えであれば、お気軽に当事務所までご相談下さい。

顧問弁護士が企業の成長を加速させる理由とは

2025-10-17

顧問弁護士というと、トラブルが発生した場合に備えて契約しておく、といったイメージをお持ちの方も多いでしょう。

しかし、経験豊富な顧問弁護士の力を借りることは、企業の成長を加速させることにもつながります。

そこで、今回は、顧問弁護士が企業の成長を加速させる理由について、ご説明します。

1 法的リスクの回避

まず、顧問弁護士がいることにより、企業が抱える法的リスクを未然に回避することが可能となります

例えば、取引先との契約時にリーガルチェックを受けることにより、取引先との契約トラブルを回避することにつながります。

また、法的トラブルが発生しそうな予兆を感じた時点で、相談することも可能であり、これにより、不必要に紛争が拡大することを防止することができます。

さらに、就業規則など社内規程の見直し・整備などにより、ハラスメント問題などをはじめとする労働問題の発生を予防することにつながります。

法的リスクを未然に回避することにより、経営者も従業員も本来の業務に集中できますので、業務の効率化や生産性の向上が期待できるでしょう。

2 法的トラブルの迅速な解決

仮に、企業が法的トラブルに巻き込まれたときは、顧問弁護士に依頼することで迅速な解決が期待できます。

顧客から人気がある弁護士ほど、数多くの案件を抱えていますが、顧問契約をしていれば、優先的に対応してもらえます。

また、経験豊富な顧問弁護士は、相手方との話し合いから裁判などの法的措置に至るまで、多様な解決方法の中から、状況に応じて最善の解決策で対処します。そのため、企業に生じる損失を最小限に抑えることが期待できます。

企業を成長させていく上では、損失を最小限に抑えることも欠かせません。

3 経営判断のサポート

顧問弁護士は、法的リスクの回避やトラブル解決のための活動だけでなく、企業の成長戦略に関する経営判断についてもサポートしてくれます。

経験豊富な顧問弁護士は、事業承継など、高度な専門知識を要する戦略についても法的観点からアドバイスし、経営判断をサポートしてくれます。

ただし、経営判断に関する適切なサポートを受けるためには、弁護士の中でも特に、企業法務の経験が豊富な弁護士と顧問契約を結ぶことが重要です。

4 コストパフォーマンスの向上

顧問弁護士が担う業務の中には、社内の法務部で対応可能なものもあります。

しかし、中小企業では法務部を設置していない会社が極めて多いでしょう。新たに法務部を設置するとなると、相応の費用がかかってしまいます。

顧問弁護士と契約するには顧問料がかかりますが、一般的に、法務部を設置したり法務担当者を雇ったりするよりは、低コストです

また、問題が発生したときにだけ弁護士に相談・依頼すること(スポット契約)よりも、継続的に顧問契約をしておいた方が、結果としてコストが低くなることもあります。

5 企業のイメージアップ

顧問弁護士と契約することは、企業のイメージアップにもつながります。

顧客や取引先から見て、顧問弁護士がいる企業は「きちんとしている」という印象を持ち、信頼感が増すことでしょう。

顧問弁護士が控えていることで、「不当な要求はできない」とも考えるはずです。その結果、取引の円滑化につながります。

また、顧問弁護士のサポート受けて企業がコンプライアンスを遵守することにより、世間一般からの信頼感が増すことも考えられます。

このようにして企業のイメージがアップすることも、成長の加速につながる要素といえるでしょう。

6 顧問弁護士をお考えの方は当事務所まで

顧問弁護士を活用して企業成長の加速をお考えなら、企業法務の経験が豊富な弁護士を選ぶことが重要です。

当事務所は、1983年の創業以来、東証プライム上場企業から中小企業、個人事業主の方の顧問弁護士として、多くのご相談を解決してきました。

これまでの経験上も、当事務所と顧問契約を締結頂き、規模が拡大していかれた企業様も多いです。

顧問料については、実際にお話を伺い、協議の上、設定させていただきます。

もし、顧問弁護士をお考えであれば、お気軽に当事務所までご相談下さい。

« Older Entries

keyboard_arrow_up

0752555205 問い合わせバナー 無料法律相談について