労働組合との交渉を円滑に進めるためのポイント

労働条件に不満を抱えた従業員が会社に対して、労働組合を通じて団体交渉を申し入れてくることもあります。

団体交渉の申し入れを受けた会社は、正当な理由なく交渉を拒否することはできず、誠実に交渉に応じることが義務付けられています。

そこで、今回は、労働組合との交渉を円滑に進めるためのポイントについて、ご説明いたします。

労働組合との交渉に備えて準備すべきこと

準備が不十分なまま団体交渉に臨むと、労働組合側にペースを握られてしまうおそれがあります。

交渉を円滑に進めるためには、以下の準備を整えておきましょう。

(1)開催日程と場所の決定

団体交渉の開催日程と場所を労働組合が指定してくることも多いですが、直ちに従う必要はありません。協議により変更が可能です。

日程を調整する際には、以下の準備に要する時間を見積もり、十分な時間を確保するようにしましょう。

ただし、あまりに長い期間を置きすぎると交渉拒否と受け取られる可能性があるため、労働組合側の指定日から10日~2週間程度先の日程を提案するのが無難です。

開催場所については、会社や労働組合の事務所とすると議論が延々と続いてしまうおそれがあるため、利用時間が限られた貸し会議室などを利用することをおすすめします。

(2)組合側の要望の把握

団体交渉において実のある議論を行うためには、労働組合側の要望を事前に把握しておくことが必要不可欠です。

団体交渉申入書などに具体的な要求事項が記載されていない場合は、速やかに要求事項を明確にするよう求めましょう。

要求事項を明確に把握できたら、会社としての対応方針を社内で検討した上で、回答内容を書面で準備しておきましょう。書面化しておくことで、団体交渉の本番において回答のブレを防止し、回答内容を正確に伝えることが可能となります。

労働組合が要求事項を明確に伝えてこない場合は、初回の団体交渉において、労働組合側の要求内容を詳細に聞き出すよう努めることになります。

(3)交渉に関するルール設定

初回の団体交渉が始まるまでに、

  1. 双方の出席者の人数
  2. 録音・録画の可否
  3. 議事録作成の有無等

交渉に関するルールも明確に設定しておきましょう。

出席者の人数を無制限とすると、不特定多数の組合員が出席して収拾がつかなくなるおそれがあるため、合理的な範囲内で制限すべきです。

また、少なくとも、録音については行うことが望ましいので、労働組合側の同意を得た上で録音を行うとよいでしょう。

議事録も作成すべきですが、労働組合が作成した議事録に安易にサインをすると、労働組合側に一方的に有利な労働協約が成立することにもなりかねません。

議事録は労働組合側と会社側で別々に作成するか、又は会社側で作成することが望ましいですが、労働組合側が作成するとした場合には交渉直後にサインすることは控え、持ち帰って内容を十分に確認すべきです。

団体交渉本番で留意すべきこと

団体交渉が始まったら、以下の点に留意して交渉を進めていきましょう。

(1)冷静に交渉する

団体交渉では、労働組合側の出席者が威圧的・高圧的な態度をとることも少なくありませんが、ひるんではいけません。逆に感情的になることも望ましくないです。

会社側がやるべきことは、労働組合の要求事項を①受け入れるのか、②受け入れないのか、③受け入れない場合に代案があれば、その内容を冷静に伝えることだけです。

冷静さを欠くと、労働組合側のペースにはまってしまいやすいので注意しましょう。

事前に準備した回答書では対応できない質問を受けた場合には、質問事項を詳細に聴き取り、次回までに回答することを約束すれば足ります。

(2)粘り強く交渉する

労使関係の紛争や労働条件交渉においては、双方の主張に一定の合理性があることも多いものです。そんなときは、会社側の意見を一方的に押しつけたり、逆に話し合いによる解決を断念したりせず、粘り強く交渉することが重要になります。

団体交渉が決裂すると裁判に発展する可能性が高く、事案の内容によっては裁判で労働者側の意見が採用されて会社が敗訴し、多額の金銭の支払いを命じられることにもなりかねません。

それよりは、団体交渉において双方の歩み寄りを図った方が、妥当な解決につながるケースが多々あります。団体交渉の回数に制限はありませんので、誠実かつ粘り強い交渉を心がけましょう。

(3)団体交渉の席上で安易な約束はしない

会社と労働組合との間で労働条件や労使関係のルールなどに関する約束事が記載された書面にサインすると、労働協約が成立してしまいます。

労働協約は就業規則や個別の労働契約よりも強い法的効力を有するため、納得できない内容の書面にサインしてしまうと、会社に重大な損害が及ぶおそれがあります。

団体交渉の席上では、頭に血が上ってしまうことも多いものです。そうでなくても、その場で提示された書面の内容を正確に把握し、受け入れるかどうかの判断を的確に行うことは困難です。

書面のタイトルが「覚え書き」や「確認書」、「議事録」などであっても、内容によっては労働協約が成立します。約束事は団体交渉の席上で決めずに、持ち帰って社内で十分に検討することが重要です。

団体交渉の終了後にやるべきこと

1回の団体交渉で労使紛争が解決したり、労働条件交渉がまとまったりすることは少ないです。多くの場合は、第2回目の団体交渉の開催日程と場所を取り決めて終了することになります。

複数回の団体交渉を重ねて和解ができたら、合意書を作成します。

他方、交渉が決裂した場合には、労働審判または労働訴訟といった裁判手続き、あるいは労働委員会によるあっせんなどの手続きにより、労使紛争の解決を図ることになります。

労働組合との団体交渉を自社で行うことは難しいことも多く、早い段階で一度、企業側で労働問題に対応する弁護士に相談した方が良いです。

最後に

京都の益川総合法律事務所は、1983年の創業以来、東証プライム上場企業から中小企業、個人事業主の方の顧問弁護士として、多数の労働問題を解決してきました。

当然、団体交渉への対応経験も有しており、労働組合との交渉を円滑に進めるためのノウハウを熟知していると自負しております。

労働組合から団体交渉申入書が届いて対応にお困りの場合には、お気軽に当事務所までご相談下さい。

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