自社と業務委託契約を締結していた人が、自社の顧客を引き抜くことは、法的に許されるのでしょうか。
過去には、自社の元従業員が、自社の顧客を引き抜くことが許されるのかという点について、解説しました。
■過去のコラム
退職した元従業員による顧客の引き抜きは違法?企業側の弁護士が解説
今回は、業務委託契約者による顧客の引き抜きが法的に許容されるかについて、企業側で労働問題に注力する弁護士が解説します。
このページの目次
1.業務委託契約者による顧客の引き抜きは違法か?
自社と業務委託契約をしていた人が顧客を引き抜いても、原則として、合法とされる傾向にあります。
なぜなら、業務委託契約の場合には、雇用契約(従業員)の場合のような競業避止義務を負っていないためです。
但し、この種の案件における裁判所の傾向を考えると、顧客の引き抜きにより、会社の経営を左右するほどの重大な損害を発生させる場合など、社会的相当性を逸脱したと評価される場合には、業務委託契約者による顧客の引き抜きが違法とされる可能性はあります。
■契約書がある場合
業務委託を締結している場合には、業務委託契約書を締結していることも多いです。
そして、その契約書の中で、契約終了後に顧客の引き抜きを行わないとの規定がされていることもあります。
そのような場合には、この顧客の引抜き禁止条項が有効か否かの検討が必要になります。裁判例でも、このような条項が無効とされていることもあります。
この問題については、①取引の禁止期間が設けられていること、②取引を禁止する顧客の範囲が限定されていることなどがポイントになります。
①の取引禁止期間については、1年以内であれば有効とされやすく、2年の場合には有効と無効で判断が分かれる傾向にあります。
②については、業務委託契約中に担当した顧客など、一定の限定がかけられているかがポイントになります。
2.顧客引き抜きの防止策
中小企業においては、業務委託契約書のひな形をそのまま使用したり、中には、業務委託契約書さえ締結していない企業さえあります。
しかし、それでは、業務委託契約者による顧客の引き抜きを法的に防ぐことができません。裁判例でも顧客の引抜き禁止条項が無効とされている例があるので、顧客の引き抜きを防止するためには、自社の状況に応じて、適切に業務委託契約書を作成する必要があります。
業務委託契約者による顧客引き抜きを適切に防止するためには、この種の問題に精通した弁護士に相談すべきです。
3.最後に
今回は、自社との業務委託契約者による顧客の引き抜きが許されるかについて、解説しました。
顧客の引き抜きの問題が発生した場合には、すぐに弁護士に相談して、適切な対応を打つべきです。なぜなら、その時点で適切に対応を打たなければ、過去にその会社が引抜きの問題に適切に対応しなかったということを自社の従業員や業務委託契約者に見せてしまうことになります。これにより、その後も何度も引き抜きの問題が繰り返されることにもなりかねません。
京都の益川総合法律事務所は、1983年の創業以来、東証プライム上場企業から中小企業、個人事業主の方の顧問弁護士として、これまで数多くの労働問題を解決してきました。
本件のような、顧客の引き抜きの問題についても、確かな対応実績を有しております。
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1983年の創業以来、京都市を拠点に企業法務に注力してきました。現在では、東証プライム上場企業から中小企業、ベンチャー企業まで、約50社の顧問弁護士として継続的なリーガルサービスを提供しています。
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