美容室・理容室の立退きの際には、「立ち退き料」が問題になることがほとんどですが、その相場はどれぐらいでしょうか。
今回は、借主側の立ち退き案件に注力する弁護士が、美容室・理容室の「立ち退き料の相場」について、過去の裁判例をもとに解説します。
このページの目次
1.美容室・理容室の立ち退き料の相場
以下では、美容室・理容室の立退料が問題となった裁判例を紹介します。
立ち退き料に関するイメージを付けて頂ければと思います。
(1)立退料600万円の事例
東京地裁令和6年5月27日判決は、美容室の事例で、立退料として600万円を認めました。
■前提情報
使用目的:美容室
月額賃料:13万2000円(税込)
賃借期間:5年6か月
■立退料の認定額
600万円
※美容室側(テナント側)の主張額は、1443万2730円であった。
■立退料の内訳(①から⑤までの合計額から減額)
①現在の敷金と新しい賃貸借契約の敷金との差額(増額)分→25万9979円
②新しい賃貸借契約のための礼金・仲介手数料→40万円
③造作費用補償→520万円
④引っ越し費用・移転先でのポスティング等の告知費用→合計100万円
⑤営業補償→195万0433円
※裁判所は、上記①から⑤の合計額を算出した後に、その3分の2程度である600万円が立退料として相当であると判断しました。
裁判所は、時々、理屈を付けて、このような減額を行ってきます。
その理論上の理由と、実際のところについては、別記事をご参照ください。
(2)立退料1600万円の事例
東京地裁令和5年1月17日判決は、理容室の事例で、立退料として1600万円を認めました。
■前提情報
使用目的:理容室
月額賃料:7万5000円
賃借期間:50年間
■立退料の認定額
1600万円
※理容室(テナント)側にて、立ち退き料に関する具体的な主張は行っていない。
■立退料の内訳(①から⑤の合計額)
①賃料差額補償→360万円
②新規賃貸借契約のための礼金→30万円(4か月分)
③内装工事費・什器備品代→150万円
④移転諸経費(引っ越し代・挨拶状等)→100万円
⑤借家権価格の補償(途中解約解決金)→960万円
※借家権とは、借地借家法が適用される建物の賃借権のことを言います。
そして、借家権価格の補償とは、借主は、借家権自体に認められる財産的価値を建物の明渡しに伴い、喪失することから、これを補償しようとするものです。
(3)立退料1400万円の事例
東京地裁昭和56年4月28日は、美容室の事例で、立ち退き料として1400万円を認めました。
■前提情報
使用目的:美容室
月額賃料:37万0756円
賃借期間:10年間
■立退料の認定額
1400万円
※美容室(テナント)側にて、立ち退き料に関する具体的な主張は行っていない。
■立退料の内訳
判決において明示されていない。
※同判決は、貸主側が1400万円の立退料を提示していること、美容室側も現在はその店舗での営業を行わず、別の場所で営業を行っていることを考慮して、1400万円の立ち退き料が相当であると判断しています。
2.美容室・理容室の立退料の相場に関する考察
一般的に、店舗やテナントの立ち退き料の相場は、月額賃料の2年~3年分程度と言われています(執筆弁護士の肌間隔としては、月額賃料の50か月分が目安となっている印象です)。
そして、上記で紹介した3つの裁判例を見てみると、月額賃料と立退料の対応関係は、下記の形になります。
(1)立退料600万円の事例→月額賃料45か月分(月額賃料13万2000円)
(2)立退料1600万円の事例→月額賃料213か月分(月額賃料7万5000円)
(3)立退料1400万円の事例→月額賃料38か月分(月額賃料37万0756円)
これを見ると、(2)の事例だけ月額賃料との関係で伸びており、(1)や(3)の事例ではあまり月額賃料との関係で伸びていません。
この理由として、一番大きいのは、その物件を借りている期間の長さであると考えられます。
(2)の事例は、賃借期間が50年にも及んでいます(もちろん月額賃料が安いというのもありますが)。
他方、(1)の事例は5年6か月です。
(1)の事例では、裁判所は、算出した補償金額から、立退料としてはこれを3分の2に減額していますが、これも賃借期間を考慮していると考えられます(理論上の理由はさておき)。
というのも、(1)の事例の月額賃料は13万2000円であり、美容室側が貸主にこれまで支払った賃料は合計871万2000円です。
裁判所も、これまでに支払った賃料の合計額を超える、立退料の支払いを認めるのは消極的になりやすいです。
次に、(3)の事例も賃借期間は10年間と、比較的短めになっています。
また、(3)の事例は、そもそも美容室側も既に当該建物で営業を行っていないとの事情もあったので、金額が控えめになっているものと考えられます(そもそも美容室側が、立退料に関する具体的な主張をしていないとの事情もあります)。
以上からして、美容室・理容室の事案では、賃借期間が重要な要素になっています。
また、事例ごとに立退料は大きく変わりますが、あくまで目安として申し上げると、美容室・理容室の立ち退き料は、月額賃料の50か月分というのが、一つの目安であると考えています。
但し、本当に事例ごとに異なるので、立ち退きを求められた際には、早期に弁護士に相談に行って頂くことをお勧めいたします。
3.最後に
今回は、美容室・理容室の「立ち退き料の相場」について、解説しました。
当事務所は、1983年創業の法律事務所であり、これまで多数の立ち退き案件に携わってきました。
特に、立ち退きを求められた借主側での対応に注力しており、立ち退き案件について、確かな実績とノウハウを確立しています。
以下は、過去に当事務所が解決した立ち退き案件の一例です。
■立ち退き案件の解決事例
①立ち退き交渉で当初立退料950万円から4500万円に増額させた事例
また、本記事内で指摘した、裁判所が立退料の減額を行ってくる理論上の理由と、実際のところの詳細については、下記の記事内で解説しています。
立ち退きを求められてお困りの事業者様は、お気軽に当事務所にご相談頂ければと思います。

1983年の創業以来、京都市を拠点に企業法務に注力してきました。現在では、東証プライム上場企業から中小企業、ベンチャー企業まで、約50社の顧問弁護士として継続的なリーガルサービスを提供しています。
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