今回は、借主側で立ち退き案件に注力する弁護士が、歯科医院の「立ち退き料の相場」について解説します。
このページの目次
1.歯科医院の立退料の相場について
まずは、歯科医院の立退料が問題となった裁判例を紹介します。
これで、立退料に関するイメージを付けて頂ければと思います。
(1)立退料2億円の事例
東京地裁令和元年12月4日判決は、歯科医院の事例で、立退料として2億円を認めました。
■前提情報
使用目的:歯科医院
月額賃料:46万5700円(共益費込み、消費税別)
賃借期間:15年
■立退料の認定額
2億円
※歯科医院側(テナント側)の主張額は、4億5932万円であった。
■立退料の内訳(①から③の合計額の2倍弱の金額)
①移転先新規医院開設費用5731万8306円
②借地権価格5120万円
③補償費895万6728円
※裁判所は、上記①から③の合計額(1億1747万5034円)の、2倍弱に相当する金額が立退料として相当であると判断しました。
(2)立退料5223万0616円の事例
東京地裁令和元年10月8日判決は、歯科医院の事例で、立退料として5223万0616円を認めました。
■前提情報
使用目的:歯科医院
月額賃料:21万2760円(共益費込み、消費税別)
賃借期間:31年4か月
■立退料の認定額
5223万0616円
■立退料の内訳(①から④の合計額)
①転居費用
②設備投資費用
③休業補償売上補償
④借家権補償
※判決理由内で、①から④の各項目の詳細金額が示されていないため、金額を記載していません。
(3)立退料2080万円の事例
東京地裁令和4年5月31日判決は、歯科医院の事例で、立ち退き料として2080万円を認定しました。
■前提情報
使用目的:歯科医院
月額賃料:26万8300円(共益費込み、消費税別)
賃借期間:6年6か月
■立退料の認定額
2080万円
■立退料の内訳(①と②の合計額)
①借地権価格950万円
②建物移転により生じる損失額1130万円
(4)立退料3760万円の事例
東京地裁平成26年10月8日判決は、歯科医院の事例で、立退料として3760万円を認めました。
■前提情報
使用目的:歯科医院
月額賃料:60万3030円(共益費込み、消費税別)
賃借期間:9年10か月(但し、先代の時代から含めれば43年7か月になる)
■立退料の認定額
3760万円
■立退料の内訳(①と②の合計額の50%の金額)
①公共用地の取得に伴う損失補償基準による算出額3720万円
②移転に伴う新たな診療機器等購入費用3800万円
※裁判所は、上記①と②の合計額(7520万円)の50%に相当する金額が、立退料として相当であると判断しました。
このような減額をした理由は、この歯科医院が先代から相続されたものですが、その相続人である夫は別の場所で歯科医院を開業しており、その元妻がこの歯科医院を経営しているためであると考えられます。
(5)立退料6000万円の事例
東京地裁平成25年1月25日判決は、歯科医院の事例で、立退料として6000万円を認めました。
■前提情報
使用目的:歯科医院
月額賃料:24万円(消費税別)
賃借期間:29年9か月
■立退料の認定額
6000万円
■立退料の内訳(①から③の合計額)
①動産移転補償、借家人補償、移転雑費補償合計746万3000円
②工作物補償3299万3000円
③営業休止補償1682万5200円
※裁判所は、上記①から③の合計額(5728万1200円)から、貸主自身が立退料として6000万円の支払いを申し出ていたことを考慮して、6000万円が相当であると判断しました。
3.歯科医院の立退料の相場に関する考察
一般的に、店舗やテナントの立ち退き料の相場は、月額賃料の2年~3年分程度と言われています(執筆弁護士の肌間隔としては、月額賃料の50か月分が目安となっている印象です)。
そして、上記で紹介した5つの歯科医院の裁判例を見てみると、月額賃料と立退料の対応関係は、下記の形になっています。
(1)立退料2億円の事例→月額賃料429か月分
(2)立退料5223万0616円の事例→月額賃料245か月分
(3)立退料2080万円の事例→月額賃料77か月分
(4)立退料3760万円の事例→月額賃料62か月分
(5)立退料6000万円の事例→月額賃料250か月分
これらの数字を見ると、歯科医院の立退料については、一般的な店舗やテナントの立退料よりも高額な数字となっています。
その理由としては、歯科医院の場合、新しい場所で開業するための診療機器が高額であり、この診療機器の補償額(新規購入額)が高額になるためであると考えられます。
また、上記5つの事例の中では、立退料が月額賃料の245か月以上になるものが3つです。反対に、立退料が、月額賃料の62か月分や77か月分にしかならないものが2つあります。
このような差ができた理由としては、低い事例の場合、新たな場所で開業するための診療機器補償費用が低額になってしまっていたり((3)の事例)、特殊事情により裁判所から立退料を半減されたためであると考えられます((4)の事例)。
歯科医院の立ち退き事案において、歯科医院側で主張すべき内容については、事例ごとに異なってきます。そのため、オーナーから立ち退きを求められた際には、早期に弁護士に相談されることをお勧めいたします。
4.最後に
今回は、歯科医院の「立ち退き料の相場」について、解説しました。
当事務所は、1983年創業の法律事務所であり、これまで多数の立ち退き案件に携わってきました。
特に、立ち退きを求められた借主側での対応に注力しており、立ち退き案件について、確かな実績とノウハウを確立しています。
立ち退きを求められてお困りの事業者様は、お気軽に当事務所にご相談頂ければと思います。

1983年の創業以来、京都市を拠点に企業法務に注力してきました。現在では、東証プライム上場企業から中小企業、ベンチャー企業まで、約50社の顧問弁護士として継続的なリーガルサービスを提供しています。
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