社内のパワハラ・セクハラ問題を放置すると、会社が損害賠償義務を負う可能性があるほか、離職者が相次ぐなどして業績の悪化を招くことにもなりかねません。
事業主には、労働者をパワハラやセクハラから守るために、ハラスメント対策をとるべき義務が法律で課せられています。
そこで、今回は、職場でパワハラ・セクハラ問題が発生したときに会社がとるべき適切な対応方法について、弁護士が解説いたします。
このページの目次
パワハラとは
パワハラ(パワーハラスメント)とは、職場において行われる、優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えて、労働者の就業環境が害されるもののことを言います。
上司から部下に対する暴言や暴行、執拗な叱責などがパワハラの典型例ですが、その他にも、無理(過大)な仕事を強要することや、逆に仕事を与えないこと、プライバシーを過度に詮索することなどもパワハラに該当する可能性が高いです。
業務上の指示や教育指導の目的で、必要かつ相当な範囲内で行われる行為はパワハラに該当しませんが、業務上の適正な範囲を超えるとパワハラに該当することに注意しなければなりません。
また、同僚間での仲間外しや無視なども、パワハラに該当する可能性があります。
セクハラとは
セクハラ(セクシュアルハラスメント)とは、職場において行われる、性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件について不利益を受け、又は、性的な言動により就業環境が害されることを言います。
職場での性的な冗談やからかい、身体への不必要な接触などにより、相手に不快感を与える行為などがセクハラの典型例です。
食事やデートへ執拗に誘ったり、性的関係を強要したりして、拒否した相手を降格させるなどの行為は、悪質なセクハラに該当します。
ただ、セクハラに該当するかどうかは、性的な言動を受けた側が、その言動をどのように受け止めるかによって左右されることもあります。
相手が性的な言動を拒否しなかったとしても、内心で不快に感じていれば、セクハラに該当する可能性があることに注意が必要です。
ハラスメント対策の重要性
パワハラやセクハラの被害者となった従業員が慰謝料などの損害賠償を請求してきた場合、加害者となった従業員だけでなく、会社も安全配慮義務違反(労働契約法第5条、民法第415条)や使用者責任(民法第715条第1項)に基づく賠償義務を負う可能性があります。
被害者がハラスメントによってうつ病などの精神疾患を発症した場合には、賠償金が1,000万円を超える高額となることもあるので、会社にとっての経済的ダメージも軽いものではないでしょう。
また、職場でハラスメントが横行していると、それだけでも業務の効率が低下してしまいます。会社が適切な対策をとらずにハラスメント問題を放置していると、さらに従業員のモチベーションが低下し、離職者が相次ぐおそれもあります。
さらに、社内におけるパワハラやセクハラの実態がSNSなどで拡散されると、企業イメージが低下し、顧客や取引先からの信頼を失うことにもなりかねません。
このようにして業績の悪化を招く事態を防止するためには、会社として適切なハラスメント対策をとることが非常に重要です。
パワハラ・セクハラ問題が発生したときの対応方法
社内でパワハラ・セクハラ問題が発生したときは、迅速に以下の対応をとりましょう。
(1)事実関係の調査・確認
まずは、事実関係を調査し、ハラスメント行為の有無や内容を確認する必要があります。
トラブルの当事者や、周囲の同僚などの関係者から、プライバシーに配慮しつつ丁寧に事情を聴き取り、社内調査を進めていきましょう。
この段階では、ハラスメント行為があったものと決めつけず、客観的な事実を把握することが大切です。聴き取った内容は書面にするなどして証拠化し、残しておきましょう。
間違いのない事実が浮き彫りになったら、その事実がパワハラやセクハラに該当するかを判断します。
(2)加害者に対する適正な措置
パワハラやセクハラの事実が認められたら、その内容や程度に応じて、加害者に対する適正な措置を検討しなければなりません。
具体的には、加害者と被害者を引き離すための配置転換や、懲戒処分などを検討することになるでしょう。
懲戒処分を行う場合は、就業規則などに根拠規定がなければならないことと、問題行動の内容や程度に見合った処分でなければならないことに注意が必要です。
事案の内容にもよりますが、ただちに加害者を解雇すると、不当解雇になりやすいことにもご注意ください。
(3)被害者に対する配慮
ハラスメントの被害者に対して、適切に配慮するための措置を講じることも欠かせません。
加害者からの謝罪や、被害者が労働条件上の不利益を受けていた場合には、それを回復させることが必要です。
また、被害者に対してはメンタルケアも重要です。
必要に応じて、産業保健スタッフとの面談や、会社の費用負担で精神科や神経内科などへの受診を勧めることもよいでしょう。
(4)再発防止措置
社内からパワハラ・セクハラ問題を根絶するためには、場当たり的な対応だけで終わりにせず、再発防止措置をとることも重要です。
職場でハラスメントに関する研修会を開催するなどして、従業員の意識を啓発するとともに、職場環境改善を図っていきましょう。
パワハラ・セクハラ問題で弁護士に相談するメリット
社内のパワハラ・セクハラ問題でお困りの場合は、弁護士へのご相談をおすすめします。
問題となっている言動がパワハラやセクハラに該当するかの判断は、法的判断となるため、意外に難しいものです。しかし、弁護士に相談すれば、事実関係の調査からサポートを受け、的確に判断してもらえます。
その上で、加害者に対する処分の検討や、被害者への対応についてもサポートを受けることが可能です。被害者から損害賠償請求を受けた場合でも、弁護士が法的観点から交渉することにより、妥当な解決が期待できます。
さらに、再発防止措置を検討する際にも、弁護士から豊富な経験に基づくアドバイスが受けられます。労働問題対応の弁護士に相談することによって、パワハラ・セクハラ問題を適切に解決するとともに、ハラスメント問題の根絶を目指すことも可能となるでしょう。
最後に
今回は、パワハラ・セクハラ問題への対応方法について、企業側で労働問題に注力する弁護士が解説しました。
パワハラ・セクハラは、従業員の人権を侵害する違法行為ですので、従業員を守るためにも、会社の健全な経営を維持するためにも、適切なハラスメント対策をとることが必要不可欠といえます。
京都の益川総合法律事務所では、1983年の創業以来、中小企業の顧問弁護士として、多くの労働紛争を解決して参りました。
社内のパワハラ・セクハラ問題でお困りの企業経営者の方やご担当者の方は、お気軽にご相談ください。